<痔の3大疾患は痔核、裂肛、痔瘻>
「痔」はポピュラーな病気ですが、正確にいうと、医学上は「痔」という病気はありません。
痔は、肛門のいろいろな病気の総称で、単独の病気をさしているわけではないからです。
痔を大別すると、「痔核」「裂肛」「痔瘻」の3つになります。
このなかでもっとも多いのが痔核です。
痔核(いぼ痔)
痔核
肛門の静脈がうっ血したり、腫れてふくらんだりして、
静脈のコブ(静脈瘤)ができた状態が「痔核」です。
直腸肛門部分には、たくさんの血管が集まっています。
とくに静脈が豊富で、心臓に戻る静脈系統と、肝臓の門脈に戻る静脈系統が網の目状に連絡し合い、
肛門の歯状線の外側部分にある下直腸静脈叢と、肛門の歯状線の奥にある直腸静脈叢の
二つの静脈叢をつくっています。
ふつうの静脈には血液の逆流を防ぐための弁があります。
動脈の血液は心臓の圧力で進んでいきますが、静脈には心臓の力も及びません。
そこで、筋肉などが動くときの圧力を利用して、静脈の血液は心臓へ戻っていきます。
このとき、筋肉がゆるんだ拍子に血液が逆流するのを防ぐのが静脈弁です。
ところが、肛門の静脈叢には弁がありません。ではどうしているのでしょうか。
実は、肛門の外肛門括約筋の動きを利用して血液を送り出しています。
肛門は呼吸とともに、また、体を動かしたり、精神的に緊張したりするたびに動いているのです。
これによって血液を迎え入れたり、送り出したりしています。
ほかの動物と同じように四本足で歩いていたときは、肛門は心臓とほぼ同じ高さにあるので、
肛門の筋肉運動だけでじゅうぶんに血液を送り出すことができたでしょう。
ちなみに、
人間以外の動物に痔はないといわれています。
ところが、二本足歩行するようになってから、肛門から心臓へ血液を送りました。
立って生活をすること自体、肛門の静脈の血液はとどこおります。
さらには、便秘をほうっておいたり、排便時にしゃがんで強くいきんだりすることも加わるので、
どうしても肛門に静脈のうっ血をきたしやすくなります。
そして、そのことが痔核を発症させることになるわけです。
肛門静脈には、動脈から血液が送られてきます。もともと血液の流れが悪く、
うっ血しているうえに血液がどんどん送られてくると、
静脈の中には血液がたまり、静脈の壁に強い圧力が加わります。
便秘でいきんだりすると、血液の流れがさらに悪くなります。一度ならまだしも、
それを慢性的にくり返していると、静脈の血管壁はもろくなってきます。
そして、もろくなった静脈血管は、圧力に負けてコブのようにふくらんでくるのです。
これを専門的には静脈瘤といいます。つまり、肛門の静脈瘤のふくらみが痔核です。
血管は伸びきっていて、炎症を起こします。痔は二本足歩行をする人間の宿命などといわれていますが、
なかでも発症しやすいのが痔核です。痔核は、「
内痔核」と「
外痔核」に分けられます。
<痔核には、内痔核と外痔核がある>
痔核は、肛門の周囲の動静脈にできた動静脈瘤の一種で、血管と結合織が肛門内に盛り上がり、
たれ下がってできたもので、形がいぼに似ていることから、別名「いぼ痔」とも呼ばれています。
痔核は、できる場所によって内痔核と外痔核に分けられます。
便秘でいきんだりして肛門に負担をかけることを繰り返していると、
クッションになっている組織の血管が切れて出血したり、
血流が悪くなってうっ血することで血管周囲の結合織が増殖し、
血管と結合織が肛門内にいぼのように出てくることがあります。
このように肛門に出てきた動静脈叢を痔核といいます。