裂肛の応急手当て
市販の
軟膏を患部に塗るか、
坐薬を用います。
また、便秘の人は便をやわらかくするために、水分を多くとり、
食事のメニューに野菜や海藻などの食物繊維が豊富な食品をとり入れます。
急性裂肛の治療&対処法
<練り歯磨きのような便が理想>
裂肛(切れ痔)は、排便時に硬い便が通るときに肛門管の皮膚が裂けてできる、
急性裂肛として始まります。肛門の一種の外傷ともいえるので、
軟らかい便が出るように排便を調整すると、傷は自然にふさがって治ってしまいます。
軟らかい便とは、練り歯磨きのような軟らかさ、あるいはソフトクリームのような状態をいいます。
このような便であれば裂肛ができることもありません。
<野菜は煮て食べるとよい>
野菜や海藻に豊富に含まれる食物繊維には、大腸粘膜から水分が異常に吸収されるのを防ぎ、
便通をよくする作用があります。快便を順調に保つには、
一日に少なくとも食物繊維を六グラム以上とることが必要といわれています。
便秘の改善には、やむを得ず緩下剤(緩やかに便通をつける薬)を使用することもありますが、
日常生活の基本は食物繊維の摂取です。
そのためには、野菜は生よりも、煮たりゆでたりしたほうが一回にたくさん食べられるので、
効率よく食物繊維を多くとることができます。
生野菜は、ほとんどが水分と空気ですから、
おなかがふくれるほどいっぱい食べても、
意外に実際の食物繊維摂取量は少ないものです。
<裂肛の傷修復に役立つ非ステロイド系の軟膏、座薬、ビタミンE>
裂肛には、傷の治癒に妨げとなるステロイド剤を含まず、かつ鎮痛効果がある成分を
じゅうぶんに配合している軟膏系座薬の使用が適しています。
具体的には、鎮痛麻酔薬のリドカイン、抗炎症作用があるグリチルレチン酸、
組織修復作用があるアラントイン、血行改善作用があるビタミンE(酢酸エステル)などを配合しているものです。
これらの成分を配合した軟膏系座剤に、ボラギノールM軟膏(武田)があります。
新レックH軟膏(湧永)は、麻酔用安息香酸エチルや塩酸プロカイン、アラントインを配合しています。
ドルマイン痔軟膏(ゼリア)は、麻酔薬と止血作用がある塩酸エフェドリンを配合しています。
ビタミンEには、血流を促進したり、傷の修復を早めたりする効果があります。
肛門の血流を改善する効果と、傷の治りを促進する効果が期待できるので、
座薬と併用して服用するとよいでしょう。製品にはユベラなどがあります。
<朝五分早起きして、水分の摂取とトイレタイム>
便秘の改善のためには、朝五分早く起きて、朝食をしっかり食べましょう。
胃にものが入ると、胃・直腸反射が起こり、大腸の中にある便のもとは肛門のすぐ手前の直腸へと移動をします。
それによって直腸がふくらみ、自律神経が反応して心地よい便意をもよおします。
また、朝食の前に牛乳か水をたっぷりとると、その水分が便のもとである大腸内容物に吸い込まれて、
便が軟らかくなります。このタイミングを逃さないで、ただちにトイレに駆け込みましょう。
ただし、排便のときのいきみすぎは痔全般の原因になります。
無理をして、いきみすぎるから、肛門管の皮膚が裂けてしまうのです。
いきむ時間は一分間程度にとどめ、全部出しきらない場合でも、
いったん中止するようにしましょう。
<運動とストレス解消>
便秘を解消するためには、腹筋を鍛えるとともに、腹式呼吸で横隔膜(胸部と腹部の器官を隔てる膜)
を鍛えるようにしましょう。また、ウォーキングの習慣を身につけることもお勧めします。
便秘は運動量が少ない人に多い傾向にあります。運動はスムーズな排便に間接的に必要なのです。
誰もが安全にできる運動として、ふだんからよく歩くように心がけましょう。
便秘はストレスが原因でも起こります。
ストレスを受けると、胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れるからです。
ストレスを避けることはできませんが、趣味や娯楽などで解消し、
ため込まないようにしましょう。
慢性裂肛の対処法
<肛門科の治療が必要>
慢性裂肛(肛門潰瘍)は、長年にわたって進行した結果です。
肛門に潰瘍やイボ、ポリープができ、いずれも非常に治りにくい状態になっています。
それらが排便のたびに引っぱられて裂けるという悪循環に陥っています。
ですから、便通を改善したり、座薬を使用したりしても症状の改善は望めません。
自己治療の限界を超えているのです。
必ず
肛門の専門医の治療を受けるようにしてください。
<医師にかかるまでの薬物治療>
医師にかかる前の間に合わせとして、一時的に薬を使用するのはよいでしょう。
絶対に誤解しないでください。医師にかかるまでの、短期間の使用に限ります。
一般に、痔用の座薬は、慢性裂肛にはほとんど効果は期待できません。
鎮痛作用のある成分を多く配合してある
非ステロイド系の軟膏座薬を使用するとよいでしょう。
該当するものに、
★麻酔薬のアミノ安香息酸エチル
★塩酸プロカインなどを含む新レックH軟膏(湧永)
★麻酔薬リドカインを1g中120mg含むプリザ座剤(大正)
★麻酔薬リドカインを1g中30mg含むボラギノール軟膏(武田、天藤)
★新エフレチン軟膏(三宝)
などがあります。
痛みが激しい場合は、医師にかかる前にセデスなどの鎮痛剤を間に合わせに短期間服用するのも、
やむを得ないでしょう。くり返しますが、慢性裂肛は医師の治療が必要で、
家庭療法でなんとかできるレベルではありません。
ただし、病院に行くまでの間、家庭でできる方法として、入浴や座浴で肛門を温めたり、
便通をととのえたりすると、多少は症状がやわらぎます。
しかし、絶対に家庭療法に頼ってはいけません。