薬物療法というと、薬を使うだけの治療と思われるかもしれませんが、 主に医師が指導するのは生活改善です。 第一度や第二度の程度の軽い内痔核や急性裂肛の場合、 食物繊維の摂取や肛門括約筋運動などを指導し、実践してもらいます。

痔の家庭療法では便秘の改善など、自分自身で行うことが基本となりますが、 病院で治療を受ける場合もまったく同じです。 座薬や内服薬を処方することが多いのですが、それはあくまで補助的なことにすぎません。 また、血栓性痔核や炎症性外痔核についても、 70〜80%の人には、同様に座浴、入浴などの生活指導 を中心にして、そのうえで軟膏、内服薬などの薬を併用して治療を行います。

あくまで、お薬は補助的なものとして考え、痔は自らの治癒力によって回復 させることが望ましいです。
お薬を使うにあたって確認しておきたいことがあります。 痔は、薬だけでは治らない病気であるということです。 市販薬は、あくまでも一時的に症状を抑えるためだけに用います。

痔の薬の効能には、痔による痛みや出血、はれを抑えることや、 薬が肛門の粘膜と上皮の表面をおおって、 便をなめらかに通過させるようにすることがあります。 それによって、便の刺激が軽減されるのです。

病院でもらった薬と市販薬との最大の違いは、 病院の薬が、医師が診察して患者さんの病状にいちばん効果のある成分が入った薬を処方しているのに対し、 市販薬はだれが使ってもいいように成分の配合を調整しているので、 症状によっては薬の効果があらわれにくくなるということがあります。

<市販薬は急場をしのぐお薬>
病院でのお薬では無い時は、2週間をめどに市販薬を使用してください。 そして、どうしても症状が改善されなかったり、 症状を繰り返すときは、ほかの病気かもしれないのですぐに専門医を受診してください。 早く診察を受ければ、それだけ早く治り、手術するケースはまれになります。 市販薬は、医師の診察が間に合わないときのリリーフ・ピッチャーといえます。

<市販薬の成分は弱いと言うのはウソ!?>
薬の効能について、市販薬は弱い成分を使っているので安全、 という人がいますがこれは間違いです。 市販薬は、短時間で効くように薬の成分を配合しているので、 意外と強い効能があるのです。

<生活習慣病の薬の使いかた>
糖尿病や高コレステロール血症などの生活習慣病の治療は、 まず、原因となっている生活習慣病をつきとめて改善し、 その次に薬を使用するようにします。痔は、現在では世界的に生活習慣病と 考えられている病気なので、まず、痔をまねきやすい生活習慣病を改め、 自然治癒力を高めることから始めてください。 そして、自然治癒力を補うものが薬物療法と考えるとよいでしょう。

<痔の市販薬の分類>
痔の市販薬は、大きくは、肛門に入れたり塗ったりする「座薬」と、「内服薬」に分けられます。 さらに、座薬には「座剤(坐剤とも記します)」と「軟膏」があります。 両者は、痔への直接的な作用を目的としたもので、わが国では古くから、 たくさんの種類のものがつくられ、市販されています。 座剤は、固形で、肛門の中に挿入すると、徐々に溶けてきて効いてきます。

一方、軟膏は先端が浣腸の先のように突起していて、 肛門の周囲の痔核に塗ったり、肛門に中に挿入したりして、(薬の中身を)絞り出して注入します。 一本に20グラム程度のたくさんの量が入っていて、 何回にも分けて使用するタイプと、一回で使いきりのタイプがあります。 成分、効能は同じで、二つのタイプのものが販売されていることもあります。

好みにもよりますが、一回使いきりタイプのほうが使いやすいと思います。 内服薬は一般に、座剤と併用して補助的に用います。 このほか、肛門の皮膚や痔の洗浄や消炎を目的とした 「外用液体」薬も発売され、薬局で売られています。