痔を悪化させる6大要因
日常生活で、肛門に炎症を起こす原因となるものには、
「便秘・下痢」
「肉体疲労」「ストレス」「冷え」「飲酒」「女性の生理」の6つが上げられます。
これらの炎症の原因を、攻撃因子の増大と防御因子の低下と考えると、わかりやすくなります。
肛門を通過する便は、きたない老廃物で、アルカリ性であるために、
もともと肛門の皮膚粘膜にとって炎症を起こす攻撃因子ということになります。
便秘・下痢の排便の異常は、攻撃因子の増大が考えられます。
アルコールも炎症を起こす物質なので、
多量に飲酒をすると攻撃因子を増大させることにつながります。
健康な人の肛門が痔にならないのは、局所免疫という防御因子と攻撃因子とがう
まくバランスがとれているためといいましたが、仮に痔の6大要因である「便秘・下痢」
「肉体疲労」「ストレス」「冷え」「飲酒」「女性の生理」のバランスをくずすと、
痔を引き起こしたり、悪化させたりする可能性は十分あります。
これらを整理すると、攻撃因子が増大して痔になるケースが「便秘・下痢(排便の異常)」
「飲酒」「女性の生理」の3つで、防御因子が低下して痔となるケースが
「肉体疲労」「ストレス」「体の冷え」の3つになります。
<便秘・下痢(排便の異常)>
便秘のときに、かたい便をいきんで排便すると、肛門の粘膜に傷がつくので、
そこから便の中の細菌に感染して炎症を起こし、裂肛や内痔核になりやすくなります。
また、きたない便を何日もとどめておくことになるので、やはりそこは炎症の原因になります。
慢性の下痢も便が勢いがよく肛門を通過するときに、肛門の粘膜を傷つけて裂肛になったり、
肛門腺窩に入って細菌感染痔瘻の原因となることがあります。便秘のときにいきむと、
肛門のクッション部に大きな腹圧がかかり動静脈叢が拡張するため、痔核になります。
<肉体疲労>
運動や肉体労働による肉体疲労は、筋肉に疲労物質をため、痔を誘発します。
また、局部免疫力も低下するので、肛門内部に炎症が起こりやすくなって痔をまねきます。
<ストレス>
人間の免疫力は、心の状態によって高まったり、低下したりすることがわかっています。
たとえば、ストレスや悲しいことがあると、免疫力は低下し、よく笑って楽しく過ごすと免疫力は高まります。
ストレスは、免疫力を低下させるので、細菌に対する抵抗力がなくなって肛門が炎症を起こしやすくなります。
もともと肛門はきたない便が通過するところなので、おびただしい細菌と接触しています。
ストレスによって肛門の防御因子である局所免疫力が低下すると、当然、
攻撃因子がまさって肛門に炎症が起こり、痔の症状があらわれすことになります。
<冷え>
体が冷えると、肛門周囲の血管が収縮するので血液の循環が悪くなり、
うっ血するので炎症が起こりやすくなります。エアコンの普及によって、
夏なのにお尻を冷やして痔になる人が増えており、今では、
痔は夏の病気といわれるようになりました。
エアコンの冷やしすぎには、十分に注意しましょう。
とくに、コンピュータを多く
設置している部屋や、スーパーの生鮮食料品コーナーなどは低温が当たり前になっているので、
そこで働いている人たちは冷えすぎないように、注意が必要です。お尻を清潔に保つためにも、
排便のあとウォシュレットで局部的に暖めてあげたり、入浴したり、お尻だけをお湯につける座浴をすると、
血行がよくなって痔の原因の1つであるうっ血がとり除かれ、症状が改善されます。
<飲酒>
飲酒のしすぎも、痔を誘発します。お酒の主成分であるアルコールが、
血管を拡張して炎症を引き起こす物質であるためです。アルコールは、
肛門に炎症を起こす攻撃因子です。攻撃因子の増大を防ぐためには、
飲酒の量は、心身の緊張をほぐす程度が望ましいと言われています。
<女性の月経前後の肛門炎症>
月経の前や月経中に、便秘になったり、逆に下痢になったりして、排便の異常を
訴える女性は意外と多いものです。月経中の肛門粘膜を観察すると、
炎症を起こしているケースがほとんどです。原因は排便の異常だけではなく、
月経そのものによって炎症を起こしている可能性があります。
くわしいしくみは、まだ、わかっていませんが、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)が
月経前から月経中にかけて急激に低下することが疑わしいと言われています。
月経は病気ではなく、また、たいていは周期的にくるので予測は容易です。
対処法としては、自分が月経前や月経中に便秘になりやすいのであれば、
月経の数日前から、豆や海藻などの食物繊維の多い食品やヨーグルトを積極的にとって
便をやわらかくする工夫を心がけましょう。