「痔」はポピュラーな病気ですが、正確にいうと、医学上は「痔」という病気はありません。 痔は、肛門のいろいろな病気の総称で、単独の病気をさしているわけではないからです。 痔を大別すると、「痔核」「裂肛」「痔瘻」の3つになります。

その中でも痔瘻(あな痔)とは、肛門の周囲にうみがたまり、 それが破れて出たあとに瘻管といううみが出るあなができる病気です。 たいていは「肛門周囲膿瘍」という病気から進行することが多く、はげしい痛みや発熱をともないます 痔瘻の治療は、自宅療法や薬では治りにくく、 「肛門がん」になることもあるので、手術をするしかありません。

痔瘻は、肛門腺窩に便が入りやすい下痢症の人や、排便時に強くいきむ人、 先天的に肛門腺窩が深い人などがかかりやすく、 若い世代の、がっちりした体格の男性に多くみられます。

痔瘻は、原発巣である肛門腺からうみが進む経路によって次の4つのタイプに分かれます。

★Ⅰ型痔瘻
皮下痔瘻、粘膜下痔瘻とも呼ばれ、発生頻度は高くありません。 肛門括約筋をつらぬいていない痔瘻で、裂肛の裂け目に便がつまることにより起こる場合が多く、 肛門腺が原発巣でないこともあります。

★Ⅱ型痔瘻
筋間痔瘻とも呼ばれ、痔瘻の60〜70%を占める、一般的なものです。 内肛門括約筋と外肛門括約筋の間をトンネル(瘻管)が走る痔瘻で、 トンネルの深さによって、菌状線より下にできるものを 「低位筋間痔瘻」、上にできるものを「高位筋間痔瘻」といいます。

★Ⅲ型痔瘻
坐骨直腸窩痔瘻とも呼ばれ、痔瘻の約20%を占め、ほとんど男性に起こります。 肛門の背側が原発口となり、そこから便が入りこむと内肛門括約筋と外肛門括約筋、 そして坐骨直腸筋の間(コートネイのスペース)が広いために、 深くて大きな原発巣ができやすくなります。 この原発巣から外肛門括約筋をつらぬいて、 左右に痔瘻のトンネルができます。昔は、馬蹄型痔瘻ともいいました。

★Ⅳ型痔瘻
骨盤直腸窩痔瘻とも呼ばれ、まれに発生します。 肛門括約筋の奥にある肛門挙筋をつらぬいて進行します。