痔という病気を理解するには、まずは肛門の構造を知っておくことが大切です。 肛門という漢字の「肛」はお尻の「あな」を、「門」は「出入り口」を意味し、 体内で消化・吸収された食物の残りカスを排泄し、便やガスの排出を調整する 器官が肛門です。

消化器官の食道、胃、十二指腸、小腸に続く大腸は、 盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、さらにS状結腸と直腸に分かれ、 肛門とつながっています。 排便と関係しているのは、S状結腸から下の部分で、 結腸を通って水分を吸収された便が直腸へおりていき、 直腸の壁が便で広げられると、 自律神経の反射作用で便意が起こります。

ふだん私たちが意識していなくても、肛門から便が漏れ出ることは絶対ありません。 それは、肛門の周囲を内肛門括約筋と外肛門括約筋という 2つの筋肉がとり囲んで、肛門を塞いでいるためです。 便をするとき以外は、肛門から便が漏れないしくみになっているからです。

粘膜の近くにある内肛門括約筋は、不随意筋といって、 自律神経によって支配されている筋肉なので、 本人の意思とは関係なく肛門を一定の力で締めつけており、 寝ていて意識がないときでも便は漏れません。

一方、内肛門括約筋の外側にある外肛門括約筋は随意筋といって 脊髄神経で支配されている筋肉なので、 意識的に締めたりゆるめたりすることができます。 電車の中で急にトイレに行きたくなったり、 人前でおならが出そうになったときにがまんできるのは、 外肛門括約筋のおかげと言うわけなのです。