一昔前までは、「悪いところをすべてメスでとり除く」というのが外科手術の基本的な考えかたでした。 しかし、現在では医学が進歩し、本来の機能をできるだけ残して、 最小限の手術をする保存療法が主流になってきました。

最近では新しいレーザー療法も開発され、また痔の予後の経過や、 痔の発生のメカニズムがよくわかってきたことから、 保存療法といって、なるべく手術をしないで治すという治療法が中心になっています。

<欧米では、痔の手術をほとんど行わない>
最近のデータによれば、欧米諸国の痔の手術率は、ドイツ7%、イギリス5.5%、 アメリカ4%となっていて、ほとんど痔の手術は行われていないといってもよいデータが出ています。

<痔で、緊急な手術はほとんどない>
内臓の病気と違って、痔では緊急に行われる手術はかぎられています。 緊急手術をしなければならない肛門の疾患は、肛門周囲膿瘍で切開が必要なケース、 内痔核の急性炎症期(嵌頓痔核など)でどうしても出血が止まらないケースです。

<生活指導と投薬で手術を決める>
緊急に手術を必要としない痔は、手術をする時期を判断するために、 痔の症状を1ヵ月ごとに評価しながら、3ヵ月間の生活指導と投薬を行って経過をみてから、 手術をするかどうかの判断を行います。

なぜ、自分の痔に手術が必要なのか、医師にたずねる 医師から痔の手術を受けるようにいわれたときは、必ず、 なぜ自分の痔に手術が必要なのか、本当に手術が必要なのか、 ということを十分医師と意見交換を行ってから手術をすることが望ましいです。

1.なぜ、自分の痔に手術が必要なのですか?
2.手術しないと、どのようなまずいことになるのですか?
3.自分と同じ症状の痔の人は、この病院ではどれくらい手術をしているのですか?
4.手術をすると、何日間で完治するのですか?
5.手術をすると、自分の症状は解消しますか?


どのような手術法か、医師にくわしく聞いてみる 次に、どのような手術が行われるのか、医師に質問しましょう。

手術しても治らないものがあることは覚えておいてほしい事項です。 日本を含めて、世界の肛門科の専門病院であれば、痔核や痔瘻などの肛門の病気に関しては、 基本的に完全に治すことができます。ただし、手術をしても治らないものがあります。

老化現象と体質です。 肛門を20代の状態に戻したり、病気になりにくい肛門にすることはできません。 肛門の病気のうち、手術で解消できるものは病気の症状だけで、 老化現象や体質が原因による症状は手術しても残るということです。