痔瘻の手術は、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、それぞれのタイプに合った方法で行われます。 「従来は、タイプに関係なく、原発口、原発巣、痔瘻の管をすべて切りとる「瘻管切開開放術式」が行われていました。 Ⅰ型、Ⅱ型の痔瘻でも、瘻管が肛門の背側にあるものは、 肛門括約筋をつらぬいて走っていないので、瘻管切開開放術式を行ってもかまいません。

しかし、Ⅱ型痔瘻で、瘻管が側方や前方を走っている場合に、瘻管切開開放術式で行うと、 患部といっしょに肛門括約筋も切ってしまうことになります。 その結果、肛門が変形したり、締りが悪くなる、などの悪い結果をまねくことがありました。 そこで、最近では肛門括約筋を残して痔瘻をとる「肛門括約筋温存手術」が考案されました。


<痔管切開開放術>
痔瘻の手術には、瘻管切開開放術といって、 痔瘻のトンネルの開口部の一次口から二次口までを切開し、 しかも開けたままにしておく方法があります。

時計に見立てて六時の方 向にできている低位筋間痔瘻(第二度)の場合、開放術で開けたままに しておいても括約筋はほとんど障害を受けないため、基本的にはこの手術が一般的で、 確実な手術法です。切開した部分の肉が手術後1〜2ヵ月で盛り上がってきて、 完治します。

ただし、痔瘻のできている場合によっては、 肛門が変形したりすることがあるため、肛門の横や上のほうに痔瘻がある 低位筋間痔瘻(第二度以上)の場合には、括約筋を温存する 手術(括約筋温存手術)を行うのが一般的です。 ほかに、輪ゴム結紮法を併用する手術もあります。 前述のセトン法と部分切開法を組み合わせて手術をする医師もいます。

<括約筋温存術>
痔管切開開放術は非常にすぐれた手術法ですが、 痔瘻のウミの巣が深いところにある場合は、肛門の筋肉を大きく 左右に切り開くことになってしまい、合併症としてお尻にひきつれが生じます。

この合併症を防ぐために、痔管を切除したあと、それによって切断された括約筋を縫合して、 できるだけ括約筋を温存するようにします。括約筋を温存すると、 肛門の機能がよく保たれます。ただし、開放術に比べて再発する確率が少し高く、 10〜20%の再発率があります。今後の課題です。